■
あなたのこえは
チョコレート
わたしのしたで
あまくとける
あなたのこえは
さつりくへいき
わたしのしたを
ちょんぎるの
わたしはこんや
あのたかい
とかいのビルのした
めをとじる
初めて幸せじゃない気持ちになった日の考察
食の好み
私と聖司くんは食の好みが合わなかった。
私は小さい頃からトマトが大好物だった。
聖司くんはトマトが嫌いだった。
私はパクチーが結構好きだ。
私と聖司くんとで食事に行った時、彼は初めてパクチーを食べた。トマトより無理だって言っていた。食べ物じゃないよって言われた。
私は主食ではパンが好きだ。
聖司くんはパンは主食にはならないと言う。
まるで真逆、っていうくらい食の好みが合わなかった。特に不自由は感じていなかったけれど。
今日初めて2人でファストフード店に行った。
ポテトとナゲットを2人で食べた。
私はふにゃふにゃのポテトを手にとって、「こういうポテトの方が好きなんだよね」と言った。
そうしたら聖司くんは、俺も!って言ったのだ。
初めて食の好みがあった。ファストフード店の150円で買ったポテトが、すごく嬉しかった。
ちなみにナゲットのソースは、私がマスタード派で、聖司くんはバーベキュー派だった。
ずっといっしょにいられる?
聖司くん、どこにもいかないで。
物理的にどこにも行かないなんて無理なことはわかっています。
心ではお互いにずっと隣にいるみたいに想い合っていることはわかっているんです。
お人形の話
私はあなたのお人形です。
あなたが好きな服を着ます。
あなたが好きな髪の色になります。
あなたが好きなお化粧をします。
あなたが触ってくれると喜びます。
あなたに放っておかれたら私はただの置物になってしまいます。
聖域、他人、あなた
私が住む街
私が住む街は、近隣の駅の中で結構大きな街だ。
海と田んぼに囲まれた田舎の地元から、数年前に上京してきた。
聖司くんとは、その田舎で出会った。
上京する前、私はサブカルチャーが好きだった。
田舎には、特に面白いことはない、と感じていた。
面白くない店、面白くない同級生、面白くない教師。私は東京にばかり、1人で遊びに行っていた。
面白いことは全部、都会にあると思っていた。
見たことない景色、サブカルチャーが集まった街、奇抜な洋服、妙に冷たい人間たち、全部刺激的だった。
上京して、大学に入学した。
知らない遊びや、色んな経験をしてる同級生を見た。
最初こそ、刺激的で、新鮮な毎日、新しい自分になった気がした、けれど、自分には合わない感じがした。
人間関係のヒエラルキーを気にしている人が多かった。私は、そんなことを気にしようと思ったこともなかった。馬鹿げてると思った。素性を知らない他人のことを下に見たり、上に見たり、意味がわからない。
都会も、それほど面白いものではないと知った。
それから歳月が流れて、聖司くんと再会した。
聖司くんは、変わらずずっと地元に住んでいた。
聖司くんは垢抜けてこそいないけれど、とても穏やかで心がきれいで、そのうえ刺激的な思考を持つ素敵な人だった。
聖司くんがいれば、どこに住んでいようと、他になにもなくていいと思える。
この街に聖司くんはいない。
大きな街だから、少し歩けば欲しいものはなんでも揃う。
お洒落な洋服も、流行りのスイーツも、ここでは手に入る。
けれど、あなたがいなければ、お洒落な洋服を着たって意味がないし、美味しいスイーツも味がしないのだ。
なんでも揃うのに、なんにもない。
繁華街は、ただの、がらくただらけの街になってしまった。
私の暮らしは、聖司くんだけいてくれたなら、成立するものになった。
聖司くんがいれば、他の何事も、楽しく、明るく、煌めく。
上京する前、当時の私は、自然を愛する気持ちを忘れていた。幼少期の、自然の中で生まれ育って、自然と遊んでいた頃のことが、すっかり記憶から抜けてしまっていた。あのころ、私は心が健康ではなかった。
心が健康だと、自然を愛する余裕ができることがわかった。
視野が広くなった。
自分一人が悲しい、と思わなくなった。
自然を見て、春夏秋冬を感じるようになった。
花が好きになった。
聖司くんと出会う前から、心は回復する傾向にあったけれど、聖司くんと出会ってからは、とても精神が健康になった。
今では、はやく田舎に住みたい、と思う。
聖司くんがいるから、そして自然があるから。
都会に住んでいることがステータス、という人もいるだろうけれど、それはその人の価値観だから、良いと思う。
田舎出身ということを揶揄う人間もいるけれど、そういう人は、心が健康ではないんだな、と思ってそっとしておく。
自然に目を向けて自然を愛する心の余裕がないのだな、と思う。
都会に住んでいると、どこに行っても、忙しそうな人間がいる。心の健康を保つのには厳しい環境だと感じる。
日本の人間が、みんな、聖司くんのように心がきれいになればいいのに。
みなさんの心の健康を願っています。