聖子の日記

恋人の聖司くんのことばかり考えてしまう聖子です。

私が住む街

私が住む街は、近隣の駅の中で結構大きな街だ。


海と田んぼに囲まれた田舎の地元から、数年前に上京してきた。


聖司くんとは、その田舎で出会った。


上京する前、私はサブカルチャーが好きだった。


田舎には、特に面白いことはない、と感じていた。


面白くない店、面白くない同級生、面白くない教師。私は東京にばかり、1人で遊びに行っていた。


面白いことは全部、都会にあると思っていた。


見たことない景色、サブカルチャーが集まった街、奇抜な洋服、妙に冷たい人間たち、全部刺激的だった。


上京して、大学に入学した。


知らない遊びや、色んな経験をしてる同級生を見た。


最初こそ、刺激的で、新鮮な毎日、新しい自分になった気がした、けれど、自分には合わない感じがした。


人間関係のヒエラルキーを気にしている人が多かった。私は、そんなことを気にしようと思ったこともなかった。馬鹿げてると思った。素性を知らない他人のことを下に見たり、上に見たり、意味がわからない。


都会も、それほど面白いものではないと知った。


それから歳月が流れて、聖司くんと再会した。


聖司くんは、変わらずずっと地元に住んでいた。


聖司くんは垢抜けてこそいないけれど、とても穏やかで心がきれいで、そのうえ刺激的な思考を持つ素敵な人だった。


聖司くんがいれば、どこに住んでいようと、他になにもなくていいと思える。


この街に聖司くんはいない。


大きな街だから、少し歩けば欲しいものはなんでも揃う。


お洒落な洋服も、流行りのスイーツも、ここでは手に入る。


けれど、あなたがいなければ、お洒落な洋服を着たって意味がないし、美味しいスイーツも味がしないのだ。


なんでも揃うのに、なんにもない。


繁華街は、ただの、がらくただらけの街になってしまった。


私の暮らしは、聖司くんだけいてくれたなら、成立するものになった。


聖司くんがいれば、他の何事も、楽しく、明るく、煌めく。


上京する前、当時の私は、自然を愛する気持ちを忘れていた。幼少期の、自然の中で生まれ育って、自然と遊んでいた頃のことが、すっかり記憶から抜けてしまっていた。あのころ、私は心が健康ではなかった。


心が健康だと、自然を愛する余裕ができることがわかった。


視野が広くなった。


自分一人が悲しい、と思わなくなった。


自然を見て、春夏秋冬を感じるようになった。


花が好きになった。


聖司くんと出会う前から、心は回復する傾向にあったけれど、聖司くんと出会ってからは、とても精神が健康になった。


今では、はやく田舎に住みたい、と思う。


聖司くんがいるから、そして自然があるから。


都会に住んでいることがステータス、という人もいるだろうけれど、それはその人の価値観だから、良いと思う。


田舎出身ということを揶揄う人間もいるけれど、そういう人は、心が健康ではないんだな、と思ってそっとしておく。


自然に目を向けて自然を愛する心の余裕がないのだな、と思う。


都会に住んでいると、どこに行っても、忙しそうな人間がいる。心の健康を保つのには厳しい環境だと感じる。


日本の人間が、みんな、聖司くんのように心がきれいになればいいのに。


みなさんの心の健康を願っています。